家畜の尿を好気微生物処理した液肥の不思議な効果

北見市の地元企業環境大善株式会社が製造販売する液体肥料「土いきかえる」は主に乳牛の排泄物を簡易活性汚泥法により処理した液体を原料としています。環境大善と当研究室は平成27年度から共同研究を開始し、「土いきかえる」には栄養としての肥料の効果はほとんどないにも関わらず、植物の生長を促進する不思議な効果があることを見出しました。微細藻類の成長を促進することも発見しており、農業や光合成微生物を用いたバイオプロセスを効率化する物質や微生物の発見が期待できます。環境大善株式会社の加藤勇太主任研究員は無菌栽培したシロイヌナズナへの施肥効果を確認し、RNA-seqによる発現解析により液体肥料がシロイヌナズナに対して植物ホルモン様作用を示すことを見出しました。

バジルへの施肥効果:左列,化学肥料,右列,化学肥料+土いきかえる

原著論文

  1. Kato Y., Konishi M.*: A mature liquid fertilizer derived from cattle urine promotes Arabidopsis thaliana growth via hormone-like responses. Biosci. Biotech. Bioeng. in press (Accepted on 1st, June, 2024)

特許・特許出願

  1. 特願2020-076809, 「微細藻類成長促進剤及び微細藻類成長促進剤の製造方法」, 小西正朗、窪之内誠、加藤勇太(2020年4月23日出願)
  2. 特許第7148099号(特願 2021-118370) 「植物生長促進剤、微細藻類成長促進剤、フルボ酸含有液及びフルボ酸含有液の製造方法」加藤勇太、窪之内誠、小西正朗 (令和3年7月19日出願,特許査定:令和4年9月27日)
  3. 特許第7486723号, 「微細藻類成長促進剤及び微細藻類成長促進剤の製造方法」, 小西正朗、窪之内誠、加藤勇太(2020年4月23日出願)(2024年5月10日登録)
  4. 特許第7485272号, 「植物生長促進剤」小西正朗、本間雄二朗、窪之内誠、加藤勇太(2019.03.04出願)(2024.04.16特許査定)(2024年5月8日登録)

微細藻類の増殖を促進する微生物(MGPB)に関する研究

微細藻類(シアノバクテリアを含む)は大気中の二酸化炭素を炭素源として直接利用して有機物を合成できる光合成独立栄養微生物で、食品に応用されています。有機炭素源を必要としないことから、原料が食料と競合せず油脂やタンパク質などの有用物質を生産できることから、次世代のバイオものづくりの宿主として期待されています。しかしながら、従属栄養細菌と比べ増殖が遅いことが課題となっています。そこで、私たちは微細藻類と共培養することで微細藻類の増殖を促進する細菌(Microalgae growth promorting bacteria, MGPB)のハイスループットスクリーニング系を構築し、多数のMGPBを環境中から分離し研究を進めています。見出したMGPBはこれまでの報告よりも高い増殖促進活性を持つことがわかったため、増殖促進因子の特定や作用機序に関する検討を進めています。共生を利用した新しいバイオものづくりプラットフォームとしての応用が期待されます。

関連学会発表

  1. Tan Pei Yu,石田奨,加藤勇太,邱 泰瑛,八久保晶弘,小西正朗: 新規藍藻増殖促進細菌Rhodococcus cerastii AF2108の増殖促進メカニズムの調査,第75回生物工学会大会,名古屋大学,名古屋,2023年9月3日(口頭発表), 学生優秀発表賞受賞

特許出願

  1. 特願2023-000957「微細藻類増殖促進用微生物、微細藻類増殖促進剤、微細藻類の培養方法、スクリーニング方法」小西正朗、加藤勇太、タン ペイ ユ、窪之内誠 (令和5年1月6日出願)(PCT/JP2023/ 45712(2023/12/20))